2024年問題だけではない。物流業界が抱える本当の課題はもっと深刻だった
こんにちは!オープンロジnote編集部です🧑🎓
10月某日、弊社代表取締役CEOの伊藤が母校である明治大学の120周年記念式典にて登壇しました🎉
当日は、
前 株式会社バンダイロジパル 代表取締役会長、社会保険労務士 弓野 理恵氏
CBCloud株式会社 代表取締役CEO 松本 隆一氏
NEXT Logistics Japan株式会社 社長 梅村 幸生氏
とのパネルディスカッションも行われ、
オープンロジは物流業界をリードする一社として、
業界が抱える課題や、プラットフォームサービスの可能性についてお話しました。
今回はそこから伊藤が語った内容について、皆様へ共有させていただきます🎁
昨年の記事はこちら!
倉庫物流のプラットフォームにビジネスの潜在的可能性を見出す
物流との出会い
大学在学中にアルバイトでネットエイジ(現:ユナイテッド)へ入社し、雑誌の定期購読サービスの営業をする中で、EC物流に出会いました。
そのサービスでは雑誌の在庫管理や発送等の物流業務を出版社様にお願いしていたのですが、発注量が増えると共に、出版社様の物流業務が追い付かなくなっていきました。
結果、雑誌を作ることがメインである出版社様が物流の業務に追われていた上、お客様にも商品をお届けするのが遅れて解約につながってしまったりと、物流業務が事業成長のボトルネックになっていました。
この課題を解決すべく、「出版社様から在庫をお預かりし、新たな物流センター(倉庫)を立ち上げ、そこで効率的に物流業務を行うようにした」ことが、オープンロジを創業するにあたっての原体験です。
不透明で利用しにくい物流
起業した2013年は、Amazonや楽天市場の小売市場への参入後、SNSの普及によってEC市場が急激に伸びた時代です。ECを始める事業者(荷主)が増えると同時に、先述の出版社のような物流課題に直面する事業者が増加しました。
事業を始めたばかりの小規模な荷主は自社で倉庫を立ち上げることが難しいため、受け入れ先の倉庫を探します。しかし、倉庫の選定は簡単ではありません。比較サイト等もありませんので、荷主はインターネット上でたまたま見つけた倉庫と打ち合わせを行い、見積りを取得し、実際にその倉庫が自社にとって最適かどうかはその時点では分からないまま、契約・運用開始までの手続きを時間をかけて進めることになります。
また、倉庫側も新たな顧客を獲得したい反面、新規契約をすれば荷主の商材やニーズに合わせた新たなオペレーションを構築しなければなりません。長期的な利益が見込みづらい小規模な荷主とは、契約したがらないことがほとんどでした。
EC市場が成長していく中、一方でその成長を支え加速させるはずの物流は、
不透明で、利用ハードルも高い状態だったのです。
AWSのように物流を利用できるサービス
当時、IT業界ではAmazonWebService(=AWS)が台頭し、誰でも、すぐにサーバーを立ち上げ、ビジネスを始めることができるようになっていました。
私はこの仕組みを物流にも活用し、「荷主にとって物流も、AWSのように簡単な手続きで、すぐに利用できるようにしたい」と考え、オープンロジを創業します。
オープンロジのビジネスモデルは、あらかじめ複数の倉庫と提携し物流のネットワークを構築、それぞれに標準的な物流サービスを構築しておき、荷主が自社にとって最適な物流を簡単な手続きですぐに利用できるようにする、というものです。
また、オープンロジはただ倉庫のマッチングを行うだけでなく、倉庫の現場改善及び物流運用の最適化も行います。荷主は簡単に物流を利用開始できるだけでなく、その後の物流運用までまるごとオープンロジに任せて、本来時間をかけるべき商品企画や販売に集中できるようになります。
倉庫側もオープンロジと契約をすることで、標準的な運用オペレーションさえ構築すれば新たな顧客を受け入れることができるようになりました。また、FAXや電話での荷主とのやり取り・紙で行っていた在庫管理等の作業もシステム上で可能ですし、倉庫運営の知識を持ったオープンロジ社員が現場改善にも尽力しますので、庫内の生産性・品質も向上します。
当時オープンロジのようなプラットフォームサービスは他になく、画期的なサービスとして多くの荷主様・倉庫様に喜んで頂けました。
しかしサービスをご利用頂く中で、私たち自身も物流業界が抱えている課題の複雑さもより強く感じることとなりました。
成長市場の裏に潜む、複雑な業界課題
物流には一般的にイメージされる「ラストマイル」の他に、「ファーストマイル」「ミドルマイル」という領域があり、それぞれに多くのステークホルダーが関係しています。
オープンロジサービスの核とも言える倉庫は、物流における「ミドルマイル」です。プロセスの中間を繋ぐ非常に重要な役割を担っており、市場規模も5~6兆円、40~50万人の方々が働く大きな市場です。
この倉庫領域も、配送同様、長い間最適化が進んでいません。
物流の”全て”に影響する倉庫
倉庫が行う業務には商品の「入荷/入庫」「検品」「保管」「ピッキング」「送り状印刷」「梱包」「出荷/出庫」等があり、荷主が倉庫を利用するにあたっての選定軸には、以下の6つの要素があります。
・Quality(品質:商品を適切に保管、ミスなく梱包し、指定のタイミングで配送会社に渡すことができるかどうか、等)
・Cost(コスト:適切なコストで荷物を扱うことができるか)
・Delivery(リードタイム:入庫から出庫までのリードタイムがどれくらいかかるか)
・Needs(ニーズ:梱包資材や方法等、荷主独自のニーズにどれくらいこたえることができるか)
・Capacity(キャパシティ:どれくらい物量を保管することができるか)
・Location(立地:配送先へ効率的に届けることができる立地かどうか)
倉庫はただ商品を保管するだけということでなく、消費者に望ましい状態で商品を届けるための様々な役割を持っています。庫内の品質が担保されていなければ、例えば保管中に商品が汚れてしまったりカビてしまったりしますし、利用した倉庫の立地が悪く、無駄な配送時間がかかれば配送会社への負担となり、荷主や消費者への配送料の負担にもつながるかもしれません。
荷主の成長にも直結する非常に重要な要素であるこのQCDNCLの6つが満足できる水準であれば、その荷主にとって最適な倉庫と言えます。しかし、これらすべてが実際どのレベルなのかは、契約をし、時間をかけて運用してみなければわかりません。
また、物流は運用してからも変化が多いものです。
荷主のビジネス上の変化(商材の多角化やマーケティング効果による急激な物量の増加、事業成長によるQCDNCLの優先度の変化等)もあれば、倉庫の内部環境の変化(経営状況や方針、人員体制、品質等)もあり、はじめは求める水準であったものが、時を経るにつれそうではなくなるケースもあります。
荷主はQCDNCLが求めていた水準でなくなれば、新たな倉庫を選びなおしたり、資金があれば、自社で倉庫を立ち上げることになります。
それを受け、倉庫は利用し続けてもらえるよう利用料を下げたり、荷主からの個別依頼にできる限りこたえていくようになります。やがて倉庫の中では荷主ごとの個別オペレーションが乱立し、経営状況が苦しい中人も雇えず作業が属人化していく、といった悪循環が生まれていきます。
物流においてシェアリングエコノミー(倉庫や配送トラックなど、物流リソースの共有)やノウハウの共有がもっと加速し、標準化できる部分が増えれば、このような課題は起こりにくいのかもしれません。しかし、物流は各社の商品情報やコストなど、経営に関わる重要な情報も含みます。荷主同士が気軽にデータを共有し連携するということも難しいため、個別最適化が進み続けていくのです。
プラットフォームで業界全体を最適化
私たちが目指すことは、物流業界にプラットフォームサービスを展開し、荷主・倉庫双方のデータを活用することでシームレスな連携・自動化、効率化を進め、業界全体を最適化していくことです。
オープンロジはネットワーク効果とフライホイール(一つの成功が次の成功を加速させるような連鎖的なプロセスのこと)が戦略のコアとなり成長するビジネスです。
Amazonがそうであるように、プラットフォームへの参加者が増えれば増えるほど利益が大きくなり、持続的な成長、そして業界全体の最適化が実現できると思っています。
パネルディスカッション
各社のプレゼンテーションの後には、登壇者によるディスカッションが行われました👥
ここからは、ディスカッションの内容から伊藤の回答を抜粋し、ご紹介いたします✨
Q. 一連の業務が区切られサイロ化(各種システムが孤立し、情報が連携できていないこと)されている物流業界の中で、皆様はその仕組みを再編成するという意味でプラットフォームビジネスを展開されています。今後の展開として、プラットフォームとして更なる業界構造の再編を目指しているのか、現在のビジネスの中で付加価値を高めていく方針なのか、見解をお聞かせください。
まず、様々な業界の中でも物流は最もと言っていいほどサイロ化が起きている業界だと思います。
しかし今後はIT技術が浸透していくことによって、業界ごとの境界やプレイヤーごとの境界が無くなり、連携されて行くはずです。データから導かれた最適な倉庫拠点の在り方や配送との連携、もっと上流の製造(サプライチェーン)領域など、業界や業種にまたがって、最適化が進められていくでしょう。新規参入プレイヤ―も増えるはずですし、垣根がどんどんなくなっていく、面白い業界です。
オープンロジは倉庫という部分でいうとミドルマイルという立ち位置ですので、倉庫を起点に、ファーストマイル・ラストワンマイルと連携し全体最適化を進めていきたいと思っています。
また、今はEC物流の領域においてビジネスを展開していますが、ECだけでなくBtoB領域などにも展開し、弊社のミッションの通り、「物流の未来を、動かす」ような会社になりたいと思っています。
Q. フィジカルインターネット *1に対する見解をお聞かせください。
フィジカルインターネットの実現は簡単ではなく、10年20年かかるようなものだと思っています。
また、ITの技術が浸透しサイロ化が打破され、データ連携が進み、業界をまたいだ最適化がなされた結果として実現していくものなのかもしれません。
連携を進めていく上では様々な商習慣もあればデータの取り扱い制限など、各社の思惑もあります。経済活動においては必ず金銭的なものも絡みますので、一企業にとどまらず、国が主導して取り組んでいかないと本当の意味でのフィジカルインターネットは実現できないと思っています。
*1…複数の企業が保有する倉庫やトラックをシェアリングし、物資を効率的に輸送しようとする、新しい「物流システム」の考え方(引用元:ビジネス+IT)
オープンロジは一緒に物流課題の解決に挑む仲間を募集中です!
今回の登壇では、
・オープンロジ創業までのお話
・物流業界が抱える課題の複雑さ
・プラットフォームで業界を全体最適化する
というお話がありました。
これからもオープンロジは業界の全体最適化に向けて、複雑に絡み合う課題に向き合い、
プラットフォーマーとして成長していきます。
少しでもオープンロジにご興味を持って下さった方は是非、
から、ご応募いただけたら幸いです💓
皆様からのご応募、心よりお待ちしております!!